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薬局薬剤師が薬や健康のことについて分かりやすく解説

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睡眠薬は依存が怖い!適正使用するために薬剤師ができることは?

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睡眠薬、抗不安薬などのベンゾジアゼピン系の薬で、規定の範囲内の量でも薬物依存になってしまうかもしれないということで通常量でも長期にわたって使用するのはやめましょうねーっていう注意喚起が少し前にありました。

正直、現場の薬局薬剤師が介入するのも難しい話ではあるかと思います。

しかし、まずはこの依存について知ることが大切!ということで今日は薬物依存について考えてみましょう!

 

薬に依存してしまう流れ

夜眠れない(入眠障害)、途中で起きてしまう(中途覚醒)、予定の時間よりも早くに目覚めてそのあと眠れない(早朝覚醒)、ちゃんと寝た感じがしない(熟眠障害)など、睡眠障害にはいろいろと種類があり、患者さんごとにもそれぞれの症状があると思います。

睡眠障害を改善するため病院へ行き、自分の症状を伝え睡眠薬を処方してもらいます。薬局で薬をもらい、それぞれの症状に合わせた薬の飲みます。眠れなかったのが不思議なくらいよく眠れるようになります。眠れない日や途中で起きてしまう度に毎回飲むようになります。

この段階で薬を飲んでる本人はこれが依存だなんて思ってないでしょうが、すでに精神的依存の状態です。

眠れないから飲まなきゃ~とか、起きっちゃったから飲まなきゃ~とかって完全に薬に頼りきってますよね。眠れない根本の原因が他にあるはずなのにその根本に向き合うのではなく薬に頼ってしまっている状態は非常に危険です。

この状態がすでに依存症であることをまずは理解しましょう!

本当に怖いのは身体的依存

上では精神的依存になるまでの話をしました。しかし本当に怖いのはここからです。

精神的依存によって、薬にたよりきって毎日繰り返し飲んでいたらどうなるでしょうか。薬は身体にとって異物なので最初は薬を飲むことによっていろいろな作用が身体に生じます。

しかし、繰り返すことによって身体が薬がある状態を普通の状態と認識してしまいます。

薬があるのが普通の状態ということは、薬を止めたら身体に異常が出ます。

この薬を止めたときに身体に出る異常を離脱症状といい、この状態になってしまうことを身体的依存といいます。

身体的依存になってしまうと薬をやめると離脱症状がでてしまい辛いのでなかなか薬を飲むのを止められなくなります。これによりさらに身体的依存が悪化してしまうといった悪循環に陥ります。もうここまできてしまうと自力で薬を止めるのは困難な状態です。

この状態にならないようにと、注意喚起が発せられました。

注意喚起の内容

厚生労働省からの注意喚起の内容は以下のようになっています。

ベンゾジアゼピン受容体作動薬を催眠鎮静薬及び抗不安薬として使用する場合は、以下の点にご注意ください。

漫然とした継続投与による長期使用を避けてください。

  • 承認用量の範囲内でも長期間服用するうちに依存が形成されることがあります。
  • 投与を継続する場合には、治療上の必要性を検討してください。

用量を遵守し、類似薬の重複処方がないことを確認してください。

  • 長期投与、高用量投与、多剤併用により依存形成のリスクが高まります。
  • 他の医療機関から類似薬が処方されていないか確認してください。

投与中止時は、漸減、隔日投与等にて慎重に減薬・中止を行ってください。

  • 急に中止すると原疾患の悪化に加え、重篤な離脱症状があらわれます。
  • 患者さんに、自己判断で中止しないよう指導してください。

 

以上の注意喚起をうけて、薬剤師としてできることは何でしょうか?考えてみましょう!

薬剤師に何ができるか

これだけ大きく取り上げられた厚生労働省からの注意喚起、薬剤師が何もしないわけにはいきませんね。薬局薬剤師の視点で何ができるのか考えたいと思います。

  • 漫然とした継続投与による長期使用を避けてください。

まず、『漫然と』って何?調べてみた。

これという目的や意識を持たず、とりとめのないさま。ぼんやり。

つまりシナールとかのビタミン剤みたいに効果もないのに継続して飲んでるのはダメですよってことみたいですね。

ってことは薬剤師としてできるのは

効果の確認&残薬確認

これをやっていく必要があると思います。まあ、今までもやらなきゃいけないことだったのでやっていたとは思いますが、改めて厳格に!という感じでしょうか。

残薬確認はこの場合コンプライアンスの善し悪しじゃないので注意してください。残薬があるということは眠れない時だけ飲んでる可能性が高いので依存度は低いです。ただ、残薬があるのにまた処方が出てる場合にはその必要性を考えて患者さんとも話をし、疑義照会や病院へのFAX等でのフィードバックで残薬調整を行うことが無駄な処方を減らすには大切だと思います。

薬の残薬に余裕があると飲む敷居が低くなる可能性もあるので、こういったところでしっかり薬剤師が関与するのが身体的依存にならないための服薬指導管理なんじゃないかと思います。

 

  • 用量を遵守し、類似薬の重複処方がないことを確認してください。

ここで一番問題視されているのは、デパス等が30日制限になったことによる倍量処方じゃないでしょうか。あきらかに倍量処方っていう処方はしっかり疑義照会しましょう。医師がそのままでって言ったらそれはもう仕方ないです。責任は医師にとってもらえばいいだけです。

類似薬の重複処方は患者があえて別の医師から出してもらうことが考えられます。それぞれの医師が知らないパターンです。これも医師が併用を知らないのであれば疑義照会すべきです。

 

  • 投与中止時は、漸減、隔日投与等にて慎重に減薬・中止を行ってください。

これは抗うつ薬などと同じ注意事項なので分かりやすいかと思います。急な中止が離脱症状を招くので急な処方OFFは患者さんに情報を聞き医師から急にやめるよう言われたかを確認。これも必要なら疑義照会しましょう。

 

最後に

今回は薬物依存と薬剤師にできることということで、現場の薬剤師がやるべきことについて個人的な意見をお話しさせていただきました。

薬物依存の内容についても触れているので少しでも参考にしていただけたら幸いです。