けんちい薬局

薬局薬剤師が薬や健康のことについて分かりやすく解説

MENU

漢方の副作用報道について思うことを小柴胡湯事件を例にして書いてみた

f:id:k-medi102:20170909011717j:plain

今週発売の週刊誌で、漢方の副作用について取り上げた記事が話題となっています。(自分の中で)

薬剤師をやっていると、週刊誌で取り上げられた薬の副作用とか、効果が無いとかそういった内容について問い合わせがよくあるのですが、嘘はついてないまでも、悪いところだけを大きく取り上げられると患者さんの不安が強くて対応が難しかったりします。

だって、薬に副作用があるのは当たり前なので、その副作用ばかり取り上げていては治療を優先すべき人の治療を妨げてしまいますよね。

では、今回取り上げられた内容はどのようなものだったのか、簡単に取り上げて考察してみたいと思います。

小柴胡湯の副作用

概要

医療関係者なら小柴胡湯の副作用はよく耳にするかと思います。

実際、小柴胡湯の副作用で10人が死亡したという報道が1996年3月にあり、これを小柴胡湯事件といい、漢方薬が安全というイメージを覆す出来事となりました。

この小柴胡湯が慢性肝炎の治療に有効だと証明され、慢性肝炎の治療で広く使われるようになったのですが、かなり低い確率で間質性肺炎の副作用が生じ、死者が出るまでになってしまいました。

ことの発端は、慢性肝炎に対して治療のメインとなるインターフェロンと、小柴胡湯を併用すると治療効果が高まると言われてきたところからです。

しかしこの併用により間質性肺炎の副作用の頻度が高くなり、しばらくしてから両者の併用は禁忌となるに至りました。

週刊誌での報道内容

週刊誌では、小柴胡湯による間質性肺炎の副作用で41人が死亡したという事実が記載されています。

これは事実なのですが、背景としてインターフェロンと併用していたことは一切書かれていません。

確かに単独でも間質性肺炎になり死亡した例もありますが、発端となったインターフェロンとの併用を記載せずに正しい情報と言えるのでしょうか?

また、医療用漢方のメインメーカーであるツムラが事の発端だ!といった感じで叩かれているのも気に食わないです。

ツムラが漢方を手軽に処方できるようにしたこと、それがこういった副作用被害を増やしている、といった感じの内容なのですが、これだけ手軽になったことで助かった人がどれだけいることか。

副作用が少ないのは事実ですし、何も考えていない医師に当たらない限りはツムラが作り上げてきた手軽な漢方処方のシステムはとても良いものだと思います。

この、何も考えていない医師にあたると、たいして効かない漢方を処方されてしまうので注意しなければいけませんね。

副作用を防止するには

では、どうしたら副作用を防止できるのか?と考えてみましたが、副作用は出てしまうのは仕方ないです。その薬が合わないという人は必ずいます。

ただ、この小柴胡湯による間質性肺炎に関しては、肺炎が発症するのは仕方ないですが死亡を防ぐことは出来るはずです。

この過去の事例では、現場の人たちがまさか漢方で肺炎が生じるなんて考えてもいなかったため、肺炎症状がでても小柴胡湯をすぐに服用中止する選択をしていませんでした。

服用を中止すれば、基本的には肺炎症状は治まります。それでも収まらない場合はステロイドによる治療で症状を抑えることができます。このように、早めの対処をすればほぼ全例で完治すると考えられています。

 

最後に

この報道によって、一般の方がどのように受け止めるのか?

もしかしたらほとんど気にしてないかもしれません。むしろ医療関係者へ、漢方を過信するなよ!というメッセージなんじゃないかとも思うくらいなので、そういった意味なら今後の医療へのプラスになるのではないでしょうか。

私は、これだけ書かれていても漢方はやはり安全な薬だということを主張していきたいです。

これで漢方を飲まなくなってしまう人が増えないことを祈っています。